阪神駅弁大会2012の攻略法
大阪・梅田の阪神百貨店で1月31日まで開催されている全国有名駅弁とうまいもんまつり。いわゆるデパートの駅弁大会ですね。駅弁ファンの私は毎年足を運んでいて、先日もいくつか購入して食べてみました。そこで、今回はお薦め駅弁などについてつらつらと書きたいと思います。
まず最初に認識すべきなのは、この催しの名称です。「全国有名駅弁」と「うまいもん」まつり。すなわち、「全国有名駅弁」だけでなく「うまいもん」も売られています。
「駅弁」とは言うまでもなく、鉄道の駅で販売されているお弁当のことですね。それに対して「うまいもん」の定義が何なのかはよくわかりませんが、ここでは「駅弁ではないもの」と考えてよいと思います。つまり、駅弁大会といっても、並んでいるすべてが駅弁ではないわけです。駅弁ではないお弁当も普通に販売されている。
具体例を挙げると、毎年ド派手に実演販売している雑魚亭の海鮮弁当は、駅弁ではありません。雑魚亭は札幌に店舗を構えるただのお寿司屋さん。駅で売っているわけではないし、駅弁とは何の関係もないわけですね。
でも、ここの実演販売の前にはいつも行列ができているし、きっと駅弁だと勘違いして購入している人は多いはず・・・。この催しで駅弁をゲットしたい場合は、こちらでは立ち止まらずにスルーするべきだと思います。
念のため書いておきますが、別に雑魚亭の海鮮弁当がおいしいかおいしくないか、弁当としての品質がどうかという話をしているわけではありません。駅弁大会で実演販売しているけれども駅弁ではないですよ、と言いたいだけ。「別に駅弁であることにはこだわらない」という人は買ってみてもいいと思います。おいしいかどうかは、私は食べたことがないのでよくわかりません。
では次の段階。最初に催しで販売されているものを「駅弁」と「駅弁以外」に分けました。次は、そのうちの「駅弁」を2つに分けてみます。すなわち「輸送」と「実演」です。
輸送とは、現地で作られたものをそのまま百貨店に運んできたもの。遠くから運ぶことになるので当然販売数は限られますし、場合によっては時間の経過とともにごはんが少しかたくなってしまう場合も見られます。
実演とは、その場で調製して販売している駅弁のことですね。調製元(駅弁業者のこと)が百貨店に出張してつくりますので、販売数も多くできるし、あたたかい状態で販売することも可能です。
輸送・実演にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、一般的に入手が難しいのは輸送のほうです。販売数が少ないわけですから当然ですよね。人気のある輸送駅弁は10時半過ぎには既に売り切れたりもします。なので、お目当ての駅弁が輸送駅弁の場合は、開店と同時に足を運ぶくらいの気合が必要となります。
その点、実演の場合は夕方でも大丈夫です。閉店時間が午後8時(最終日は午後5時)ですが、午後7時くらいまでに現地に到着すれば、まず入手は可能だと思います。
では、このあたりの事情を最低限踏まえた上で、個人的におすすめできるものを紹介してみます。今回は「駅弁であること」「現地で実際に売られていること」「おいしいこと」「価格が妥当であること」「ある程度歴史があること」「お弁当としての完成度が高いこと」「家庭ではなかなか作れないお弁当であること」などを基準に選んでみました。
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①おたる海の輝き 北海道・小樽駅 小樽駅構内立売商会
彦摩呂氏のグルメレポート風に言うと、まさに「海の宝石箱や~」という感じ。単にうにやいくらをごはんに乗っけているというだけではなく、卵焼きやきゅうりも含めてお弁当としての完成度が非常に高い。実演販売なので夕方でも入手可能です。
②焼漬鮭ほぐし弁当 新潟県・新潟駅 三新軒
新潟駅の幕の内弁当「鮭の焼漬弁当」で評価の高かった鮭の焼漬を、ごはんの上にほぐしてたっぷりのっけたという、ちょっと夢のような駅弁。見た目の派手な海鮮ものや牛肉ものと比べると地味ではありますが、満足度は高いと思います。こちらは輸送かつ人気駅弁なのでできれば早い時間に。
③湖北のおはなし 滋賀県・米原駅 井筒屋
これまた見かけは地味なお弁当なんですが、とにかくかわいい!風呂敷に包まれたお弁当を開けるときのわくわく感と、1つひとつ丁寧につくられたおかずの完成度。特に女性には受けると思います。これまた輸送なので入手したい場合は早い時間に。
④吾左衛門鮓 鯖 鳥取県・米子駅 米吾
この駅弁はやたらと高いので、私も昨年までは敬遠していました。でも、昨年初めて食べてびっくり。酢飯と鯖と昆布のハーモニーが素晴らしく、切り分けるときはまるでケーキのようにわくわくしました。ちなみにこちらによると、かの立川談志氏もファンだったとか。輸送駅弁ですが、高額なのですぐには売り切れないと思います。できれば午前中に。
⑤ぶりかまめし 富山県・富山駅 源
「ぶり釜めし」ではなく「ぶりかま・めし」。やわらかく煮たぶりのかまを酢飯にのっけたお弁当。骨を気にせず丸かぶりできるぶりかまに、初めて食べた人はきっと感動するはず。こちらも輸送なので、早い時間に購入する必要があります。
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さて、ここで少し補足。今回はお薦めに挙げませんでしたが、実は東日本大震災の被災地であり、原発事故の被害を最も受けている福島県からは、郡山駅の福豆屋が実演販売で出店しています。販売しているのは実演では幸せの黄色い豚めし、輸送ではあぶくま山菜栗めしとばんだい松茸めしの2つ。
福島をはじめとした東北の食材については、国が定める暫定規制値や検査体制に関する批判が存在しています。特に小さな子どもや妊婦さんがいるご家庭の場合は、敏感になるのは当然だとも思います。
ただ、福豆屋さんに電話で問い合わせたところ、
- あぶくま山菜栗めしとばんだい松茸めしはほとんどの食材が福島産だが、検査の結果「検出せず」だった。
- 幸せの黄色い豚めしのごはんは実演なので関西のお米。豚肉は福島産だが、月1回の検査で問題なしとの結果が出ている。
とのことでした。デリケートな話なのですべての人にお薦めはしませんが、私は今回、駅弁ファンとして福豆屋の駅弁を購入して、おいしくいただきました。そのことは付記しておきたいと思います。
なお、蛇足ですが、放射性物質の拡散により、現在では日本の食に関する信頼は大きく揺らいでいます。そのリスクは駅弁も全く例外ではありません。
ただ、個人的な見解としては、駅弁は旅行中などの非日常の場で食べるものであって、日常的に口にするものではないですよね。子どもや妊婦さんの場合はさておき、大人の場合はある程度のリスクは許容しないと仕方がないのかな、と思っています。それは、駅弁に含まれる保存料やPH調整剤などに関しても同じです。
もちろん、駅弁は別に食べなくても困らないものなので、気にされる方はわざわざ食べる必要はないと思います。そのあたりは各自で判断していただければと思っています。
なお、その他の雑感は次回に。