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映画・テレビ

2012年4月22日 (日)

《映画評》 エスパー魔美 星空のダンシングドール ★★★★☆

原恵一氏の初監督作品。私はエスパー魔美が大好きだったのになぜか見逃していて、しかもDVD化されていないのでもう諦めかけていたんですが、やっと観ることができました!40分ほどの短編作品です。

以下、ネタばれを含みますので未見の方はご注意ください。

前半は正直、ゆるい感じなんです。テレビ版のエスパー魔美の延長線上な感じで。でも、それらは後半のストーリーに説得力を持たせるための伏線になっています。

ストーリー自体はそんなに目新しいものではないんですが、とにかく演出がリアルでキレキレです。のちに原監督は「クレヨンしんちゃん」の「オトナ帝国の逆襲」や「アッパレ戦国大合戦」を撮るわけですが、キレキレ演出の原点はこの作品の中にもビシバシと感じられます。

登場人物が寝台特急「瀬戸」を待っているシーンからは、思わず背筋を伸ばして観てしまいました。リアルな時間の経過と原体験の描写が非常に秀逸で泣けてくる。まあ、間違いなく子ども向けではない演出ではあるんだけど・・・。

そして、ラストの疾走感と爽快感。映画版のオープニングにはテレビ版のエンディングテーマが使われていたので「どうしてかな」と思ったのですが、その理由がここでわかります。うーん、見事ですよね~。

ここまで秀逸な作品を観せられてしまうと、「原作の映像化」についていろいろと考えてしまいます。

原作のある作品を映画化・アニメ化する際に、原作を少し膨らませること自体は必ずしも悪くないと思うんですよね。漫画とアニメは表現手段として別物だし、映像作家の作家性はその膨らませる部分にこそ現れるわけで。

ただ、あくまでも原作の世界を壊すことなく、さらに深める形でないと何の意味もないと思います。原作者が亡くなったあとのドラえもん映画の惨状をみれば、その無意味さと醜さが如実に感じられます。残念かつ残酷なことですが、それが才能というものなんでしょうね。才能と原作に対する愛情の有無。それによって作品に残酷なまでの違いが出てしまう。

原監督の「河童のクゥと夏休み」は藤子・F・不二雄氏の原作ではありませんが、飼い主に殴られる犬のエピソードが出てきます。これは明らかに、ドラえもんの「ドロン葉」(てんとう虫コミックス16巻)へのオマージュだと思います。才能に加えて、藤子作品に対する愛情まであるんだから、「エスパー魔美」の映画版が良質の作品に仕上がらないわけがない。

ただ、原監督の現時点での最新作「カラフル」は、正直期待外れでした。原作を読んでなかったらまた印象が違ったのかもしれないけど、「どうしちゃったの?」という印象・・・。なんだかしがらみが多くて訳わかんなくなっちゃったのかなあ。次回作に期待です。

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2012年3月24日 (土)

《映画評》 キャタピラー ★★★☆☆

主演の寺島しのぶがベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を獲ったとか何とか。話題作だし、結構期待して観たんですが、結果的にはかなり期待外れでした。

以下、ネタバレを含みますので未見の方はご注意ください。

発想は確かに面白いんですよね。手足を失って帰ってきた夫と、彼を献身的に世話する妻。2人の関係性とそれぞれの性的な欲求が、時間の経過とともに少しずつ変わっていきます。そして、その関係性を取り巻いているのが、負傷した夫が村じゅうから「軍神」として扱われている、という特殊な世界なわけです。

でも、関係性の変化というテーマで考えたら、塩田明彦監督の「月光の囁き」のほうがはるかに奥が深いしえろいし面白いんですよね。比べる対象としては適切ではないかもしれないけど。

では、メインテーマである「反戦映画」としてはどうなのか。残念ながら、その視点で観ても底が浅く感じました。まあ、普通に「戦争は悲惨だなあ」とは思ったので、それだけで十分なのかもしれませんが・・・。

だいたい、ラストに原爆の映像が長々と挿入されて、元ちとせが歌う「小さな女の子」がご丁寧に歌詞つきで流れるんですが、そもそもこの作品に原爆は大して関係ないやろ。夫は原爆で怪我したわけでもなければ、原爆で死んだ人物も登場しないんだし。ましてや、子どもなんてほとんど登場しないわけで。

正直、元ちとせの歌を聴きながらぽかーんとしてしまいました。この映画の主題歌としてではなく、単独で聴いたら心に響く名曲なのかも、と考えたらすごく残念でした。

やはり、少し前に「この世界の片隅に」を読んでしまったことが大きいと思います。(こちらに書評を書いています)何もこれみよがしな演出をしなくても、当時の人々を丁寧に、淡々と描くだけで十分過ぎるほどの反戦作品になる。それを知ってしまった今となっては、残念なからこういう作品を観ても薄っぺらく感じてしまう。

寺島しのぶも、正直どこがいいのかよくわからなかった・・・。どちらかといえば、夫役の大西信満のほうが熱演だったと思うんだけど。海外で評価されたのは、外国人にとってわかりやすい日本人妻のイメージだったからでは、などというイヤミなことも考えてしまいました。シェー!

あと、ストーリーとはあんまり関係ないんですが、篠原勝之は太りすぎやろ。食料不足が描かれている中で、あの体型は何とかならんかったんかな。きっと観た人は全員ツッコんだのではないかと思います。

てなわけで割と酷評なんですが、若松監督の前作「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」は大好きで★5つなんです。観たあとずっと登場人物の物まねをしていました。観るべきなのはこちらではないかと思います。

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2012年2月13日 (月)

《映画評》 しあわせのかおり ★★★☆☆

地味な映画だしあまり期待してなかったんですが、すごく丁寧につくられていました。ストーリーはベタベタだけど、調理シーンや出てくる料理がおいしそうで楽しい。登場人物のせりふや間もリアル。最近よくある「ゆるい映画好き」マーケットを狙った作品とは一線を画すると思います。

以下、ネタバレを含みますので未見の方はご注意ください。

ストーリー的には、脳梗塞で調理ができなくなった料理人の王さん(藤竜也)と、デパートを辞めて彼に弟子入りする女性(中谷美紀)との師弟関係が基本となります。なので当然、たくさんの料理が出てくるし、調理シーンもわんさか。

藤竜也も中谷美紀も料理人として自然に見えました。ちゃんと練習しはったんやろなーと感心・・・。「ちゃんと本人が中華鍋ふってますよ!ほらほら!」とアピールするようなシーンもたくさんありました。

そして、観終わった後に私は王将に行きました。あはは。本当はもっとそれっぽい中華料理屋さんに行きたかったんだけど、まあ近場で王将・・・。やはり中華が食べたくなるんですよねー。作中に登場したトマト卵炒めもさっそく作ってみたのでした。

キャストはちょい役で渡辺いっけいが出ていたり、けっこう豪華。山田雅人が出てたのは、裏刑事での藤竜也繋がりなのかなあ・・・。平泉成なんて出番短いんだけど、おいしそうに食べる演技はさすがでした。

もちろん、細かいツッコミどころはあるんですけどね。例えば、主人公たちが上海と紹興に出かけるくだりは、ちょっと長かったかな・・・。中国ロケを思い切って敢行したら、使いたくなるような風景が多くて長めに入れてしまったんやろか。そんな邪推をしてみたり。

最初に中谷美紀が毎日通ってランチを食べるシーンも、ちょっと不自然。デパートが出店を要請するような評判のお店なんやったら、ランチ時にはもっと行列ができてるやろ。作中では全然並んでなかったし、もちろん相席でもなかった。もう少し混んだ店にしてもよかったと思うけどな。

ラストの食事会も、なんだか会話が楽しくなさそう・・・。いきなり歌いだした娘の度胸にもびっくりでした。声楽やってる子ってあんなに度胸あるんやろか。

あと、あまり関係ない話なんですが、作品を観ながら、漫才師のオール巨人と、師匠だった岡八朗のエピソードを思い出しました。ウィキペディアで読んだエピソードなので、本当かどうかはよくわからないんですが、せっかくなので紹介してみます。

吉本新喜劇のスターだった岡八朗に弟子入りしたオール巨人は、岡に厳しく鍛えられ、漫才師として成功を収めます。ところが、その後師匠の岡は脳挫傷で倒れ、後遺症として記憶障害が残ってしまう。

記憶障害のリハビリをしつつ、岡八朗は娘との漫才で舞台復帰を目指しますが、その際にサポートしたのが弟子のオール巨人。以下にウィキペディアの記述を載せてみます。

岡の舞台復帰の際は、娘との漫才のサポートを懇願され、事故の後遺症でなかなか台本を覚えられない岡にダメ出しをするなど、漫才に対して厳しい姿勢を見せながらも、衰えた師匠の姿に密かに号泣するなど、深い師弟愛と芸に対する厳しさの両面を見せた。

なんか、めっちゃ感動する話じゃないですか?厳しい姿勢を見せたのは、過去に自分が師匠から厳しく指導されたからだと思うし、「病気なんだから」とお客さんの前で妥協することは、きっと師匠の教えに反することだったんでしょう。私はこういう話に弱い・・・映画化されたら泣くかも・・・。

話がめっちゃ逸れましたが、作中でも私は何度か泣きそうになりました。藤竜也ってこんなに味のある役者さんだったんですね・・・。緩急も間も表情もすごくよかったです。映画を観ながら、何かを一生懸命頑張るっていいなーとも思いました。興味がある方はぜひ。

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2012年1月 7日 (土)

のび太30歳

今さらなんですが、トヨタの「野比のび太30歳、やっぱり独身」などのCMについて。

まあ、あまりにも当たり前過ぎてわざわざ私が書くまでもない話なんですが、原作ではのび太は20代でしずかちゃんと結婚しているし、おそらく20代のうちにノビスケという子どもにも恵まれています。

例えば、てんとう虫コミックス16巻の「りっぱなパパになるぞ!」では、のび太は25年後の自分に会いに行きますが、25年後には既に10歳前後のノビスケが存在しています。のび太自身も10歳前後だと思われるので、どう考えても20代で結婚して父親になっているはず。「30歳、やっぱり独身」というのは、誰が考えてもおかしい話なわけです。

いくら原作者が既に他界しているからといって、原作を捻じ曲げてまで宣伝したいのか?私には理解できないなあ。遊び心も大切かもしれないけど、それはあくまでも原作に則った範囲に留めるべきだと思うし、それを安易に逸脱するなんて、能力のなさと品性の下劣さを証明しているようなものだと思います。あーあ、世界のトヨタですか・・・。

大人になったのび太のさえない感じを表現したいんだったら、「のび太30歳、やっぱり期間工」とかのほうがトヨタらしくていいのでは?ついつい、そんなことを毒づきたくもなってしまいました。

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2011年9月20日 (火)

《映画評》 エクリプス/トワイライト・サーガ ★★★☆☆

世界中で10代の女の子を熱狂させている「トワイライト」シリーズ。本作はその映画版の3作目です。私は10代でも女の子でもないわけですが、知り合いに薦められてつい1作目を観てしまい、乗りかかった船で3作目まで観てしまいました。

以下、ネタばれも含みますので未見の方は注意してください。

私は原作は読んでないので、このシリーズには映画から入ったわけですが、1作目を観てまず思ったことは・・・主人公の男たちがかっこよくない、ということでした。

もちろん、かっこよさなんて主観なので、好きな人は好きなんだろうけど、私には主人公のエドワードは元オウム真理教の上祐史浩氏にしか見えないし、その彼が超イケメンとして描かれている世界にまず大きな違和感がありました。(全然関係ないけど、ハリーポッターの主人公も、あの「A」こと荒木浩氏に見えてしまいますよね。私だけだろうか。)

そして、ヒロインを巡ってエドワードと争うことになるジェイコブ役の俳優さんも全然かっこよくないし、ヒロインの女の子も全く好きなタイプではなく…。私にとっては、大して魅力的でもない女の子を巡って全然かっこよくない2人が争うという、かなり滑稽なストーリーに見えてしまいました。

てなわけで、主演の3人が好みではないのに加えて、ストーリーも大人が楽しめるようなものではなかったんですが、さすがに3作目ともなると自分なりの楽しみ方ができるようになってきました。うん、これはコメディとしてだったら面白いかも。

実際のところ、1作目では完璧な二枚目だったエドワードは、3作目では若干ネタキャラ化しつつありました。そして、2人の男性の心を繋ぎ止めるべく発揮される、ヒロインの綱渡り的な言動も見所の1つ。決して決定的な言質をとられることなく2人を繋ぎ止める様子は、まさに二枚舌外交と呼ぶにふさわしいもので、それなりに楽しく観られました。

好みではない映画であっても自分次第でそこそこ楽しめるんやな、という発見があったので★3つにしました。

あ、もちろん、もしエドワードやジェイコブが好みのタイプであれば、特に女性にとっては胸きゅんのストーリーであるとは思います。

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2011年8月10日 (水)

《映画評》 裸の島 ★★★★☆

最近観た映画ではないのですが、今さら「裸の島」について。この記事を読んで思い出したのでちょっと書いてみます。

99歳・新藤兼人監督、人生最後の舞台挨拶「ときどき思い出して」

「裸の島」が新藤監督の代表作かどうかは意見が分かれると思いますが、私はかなり好きな映画です。「低予算で撮られたインディペンデント映画のさきがけ」「セリフなしの実験映画」などの説明はできるんだろうけど、私は単純に内容が気に入りました。

以下、ネタばれも含みますので未見の方は注意してください。

登場人物は、小さな島で暮らす夫婦。場所は瀬戸内海であると思われるのですが、前半はとにかく、水を汲んで運ぶシーンが延々と続きます。島には水道はおろか井戸もないので、毎日船を漕いで水を汲みに行かなければいけないわけです。1日のほとんどが水を汲む作業のみに費やされる。

まあ、ひとことで言えば「なんでそんなとこに住むの?」という感想ではあるのですが・・・。それは今の時代だから言える感想なんでしょうね。で、前半はひたすら退屈で、私も眠たくなりました。

でも、後半になると前半の伏線が生きて、本当に美しい映画となります。そして私も感涙。セリフは歌と感嘆詞しかないし、同じ音楽が何度も何度も繰り返されるんですが、同じ音楽なのに毎回異なる感情がわきおこってくる。悲しく感じたり力強く感じたり。これはとてつもない映画だと思いました。

妻役の乙羽信子は1回しか笑わないんだけど、その1回の笑顔を観ただけで私も本当に救われました。この人の人生にも笑顔があるんだって。映画だとわかっているですけどね。つくり話だとわかってるのに。

設定された時代背景は正確にはわからないのですが、モーターボートもテレビも出てきます。なのに、主人公たちは手漕ぎの船で、原始時代のような暮らしをしている。それは今も昔も変わらない、都会と地方の現実なのでしょうか。

基本的には退屈で地味な映画なので万人にはお薦めできませんが、私は好きなので書いてみました。機会があればぜひ。

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2011年7月26日 (火)

《映画評》 シャンハイ ★★★☆☆

2010年の作品なのに、なかなか日本で公開されなかった「シャンハイ」。私のお目当てはもちろん、周潤發(チョウ・ユンファ)でした。ジョン・キューザックとか渡辺謙とか菊池凛子も出てるけど、とにかく周潤發です。

ハリウッド進出して以来、坊主とかハゲとか武藤敬司とか(似てるだけか)本当にろくな役を演じていない周潤發が、今作では髪の毛があるのはもちろん、久しぶりに銃を手に取るらしい。それだけでも観る価値がある、ということで観てきました。

以下、ネタばれも若干含みますので未見の方は注意してください。

前半はとにかくストーリーの進み方が速くて驚きました。正直、ついていくので精一杯。私はもともと知能が低くて、ややこしい筋の映画は全然理解できないのですが、「もう無理、訳わからん」と匙を投げる一歩手前でした。周潤發観たさに何とかついていきましたが…。

なので、事前にある程度の背景知識を仕入れてから観るほうが理解しやすいのではないかと思います。具体的には当時の上海の状況や簡単な人間関係などですね。

ちなみに、過去に私がついていけなかった映画には「JSA」「ダ・ヴィンチ・コード」「ナイロビの蜂」などがあります。その程度の映画ならついていける、という方なら予習なしでも大丈夫かもしれません。

ともかく、ストーリーについていくことで精一杯だったので、話の先読みや感情移入などがあまりできませんでした。これって私があほだからかなあ。

で、肝心の周潤發ですが、久しぶりにまともな役でした!しかも考えようによっては一番おいしい役。一番かっこいい役にもなり得るし、観ている人を泣かせることもできる役なんだけど、他のビッグネームとのバランスのためか、結構控えめな見せ場で終わってしまいました。

正直、渡辺謙は要らなかったなあ、と思いました。渡辺謙にも見せ場をつくった結果、話がちょっと散漫になって群集劇になってしまったような。「男と女はこういうもの」「当時はそういう街だった」なんていう大きなテーマにせず、ジョン・キューザックとコン・リーと周潤發の行動だけに絞ったらよかったのに、というのが周潤發ファンである私の感想です。

ストーリー的にはきっと「カサブランカ」に重ねる人が多いと思いますが、それにしてはボギーの扱いが地味だろう、と。周潤發初期の名作「風の輝く朝に」みたいな映画をまたつくってくれないかなあ…。

あと、私はコン・リーってあまり好きではなかったんですが、今作ではすごくきれいで説得力がありました。もう45歳くらいのはずなのに。年を重ねるにつれてきれいになることってあるんですね。

蛇足ですが、本作には南京事件に関する台詞がいくつか出てきます。もしかしたら公開が遅れた理由はそれだったのかも、なんて嫌なことも考えてしまいました。

周潤發のファンとしては必ずしも大満足の作品ではありませんでしたが、銃を持った姿をスクリーンで観られただけでも意味がありました。次回はコメディにでも出てくれないかなあ…。

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2011年7月22日 (金)

《映画評》 コクリコ坂から ★★★★☆

私が大学生の頃には学友会というものがあって、「入試期間中に構内を閉鎖するのはけしからん」とかいって、大学側に抗議をしたりしていました。私は当時、そうした活動とは全く無縁な文化系サークルに所属していたのですが、1つ上の先輩方は学友会による抗議行動に動員されてしぶしぶ参加したりしていました。

大学3回生くらいまではゲバ文字の立て看は構内の至るところにあったし、講義の前に突然老けた容姿の学生が教室に入ってきてアジ演説を始めたりもしていたのですが、そのような光景はだんだんと見られなくなりました。卒業して数年後に母校を訪ねたときには、もうゲバ文字の立て看はほとんどなくなっていて、構内の空気は様変わりしていました。

きっと、私はそういう時代の残り香にかろうじて触れた最後の世代なんだと思います。

サークルの部室が入っていた建物はまさにカオスで、深夜に訳のわからない能楽の声が聞こえてきたり、「この人はここに住んでいるのではないか」と思われるひげ面の学生がやかんの湯を沸かしていたりしました。卒業後に訪ねたときには、その建物はあっけなく取り壊されていて、冷暖房完備のきれいな校舎に代わっていたのですが…。

スタジオジブリの話題作「コクリコ坂から」を観て、私は自分の大学生時代を思い出してしまいました。映画の舞台は大学ではなく高校だし、実際のところ私は登場人物のようにキラキラした学生生活を過ごしたわけではないんですが…。

以下、ネタばれも若干含みますので未見の方は注意してください。

私は近年のスタジオジブリの映画はあまり得意ではなくて、「ポニョ」とか「ハウル」とか「アリエッティ」とか「ゲド戦記」なんかは中の世界に入って行けなかったのですが、あまり期待しないで観た「コクリコ坂から」はよかったです。やっぱり私はファンタジーは苦手なんだな、と再認識しました…。

時代設定は1963年なので、60年安保の数年後。映画の中では高校生たちがアジ演説をしたり激しい討論をしたりしますが、そのテーマは基本的には「建物の取り壊しの賛否」のみであり、政治の話題に触れることはありません。また、討論会で激しくやりあっていても、先生が入ってきたら歌を歌ってごまかします。挙句の果てには、ブルジョアの権化である理事長の力を借りて要望を通そうとします。

要するに、とことんdecentな世界だと思いました。英語なんかで表現したくはなかったんですが、ぴったりくる言葉が見つからなかったのでdecent。無理やり日本語で言うと「まっとうな」「礼儀正しい」「上品な」「身分相応の」といった感じでしょうか。とことんdecentな世界はもちろん激しく物足りないわけですが、結果として大人から子どもまで安心して観られる作品に仕上がっていると思います。近年のジブリ作品のような目立った破綻もありませんでした。

恋愛ストーリー的にも、女性は胸きゅんになる人が多いのではないかと思います。もちろん、登場人物が好みのタイプであれば、という条件つきではありますが…。

そして、男性の私は2時間足らずの上映時間内に恋に落ちて失恋いたしました。「こうあってくれたら…でも映画的にはきっとああなるわな。でも、なってほしくない…。あ、やっぱりそうなったか。くやしい~」という心情の流れを経験した結果、喪失感を持って映画館を出る羽目となりました。ちょっと褒め過ぎかもしれないけど…。

ただ、地味な題材の映画なので大ヒットはしないかもしれないですね。「アリエッティ」よりよっぽどいいのになあ。

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2011年6月 6日 (月)

《映画評》 ロスト・イン・トランスレーション ★★☆☆☆

ソフィア・コッポラ監督の「ロスト・イン・トランスレーション」を観ました。

すごく評価の高い作品らしいですが、正直私にはさっぱりでした…。「日本語がわかってしまうから」「日本をバカにしているように感じられるから」などの理由もあるんだろうけど、基本的に登場人物があまりにも私の人生とはかけ離れているので、感情移入しろというほうが無理だと思う。

スカーレット・ヨハンソン演じる若妻が、夫や夫の知人と会食するシーンがあるんですが、その場での会話がくだらないので、ビル・マーレイ演じる主人公とホテルを抜け出します。それまでとことん退屈な映画だったので「おお、やっと外の世界に抜け出せる!」と思ったら、なんかわけのわからんおしゃれな人たちに混じって踊ったり歌ったりしちゃう。

個人的にはそっちの世界のほうが正直きつくて「これやったらホテルの中のほうがはるかにましやん」と思ってしまいました。まず超高級ホテルとかおしゃれとかを抜け出して、下町のゲストハウスに泊まるところから始めないと話にならない。だいたい、主人公たちは挨拶程度の日本語すらしゃべろうとしないんだもん。

まあ、そういう趣旨の映画ではないことはわかっていますが、あまりにも自分とは種類の違う人たちが登場人物だったので、想像力を働かせるのが大変でした。

そもそも、自分のことを他人に理解してもらうなんてほとんど不可能だと思います。同じ言語を話す相手であろうとなかろうと。こいつら今さら何を期待しているの、とも思ってしまいました。きっと恵まれた人生を送ってきたんやろな。

街の風景は確かに外国人が撮ったほうがきれいで面白いケースがありますが、この映画に関してはそんなことも感じなかったな…。メイベル・チャンの「誰かがあなたを愛してる(秋天的童話)」ではニューヨークがすごくきれいだったんだけど。

そんなわけで、なんかすっきりしない気持ちのときに、SNSDのソニが倒れたというニュースを聞きました。一夜明けて記事にもなっています。

少女時代のサニーが日本でのコンサート中に倒れ、涙の謝罪―韓国

コンサートの最後には戻ってきたらしいので少し安心しましたが、先日のMステで少しむくんでみえたのは、二日酔いではなく体調不良だったんですね。ソニ以外にも体調不良の話がちらほら。ものすごいハードスケジュールだと思うし、本当に心配です。

「ロスト・イン・トランスレーション」では、ビル・マーレイ演じる主人公が、ウイスキーのCMに出演するために日本に来ます。でも、仕事は大してしんどくもなさそうな撮影のみで、あとは超高級ホテルに泊まって毎晩「眠れない」とか言ってバーで飲んだり、若妻と遊んだりしていました。うだうだする暇があったら、少しはSNSDを見習って身を削れよ、と思いました。きっと彼女たちは寝る暇もなく働いているはず…。

9人そろってこその少女時代ですが、逆に言えば、9人もいるので体調不良のメンバーがいても何とかなるはず。少しはお休みできないのかな。SNSDにとっての日本が少しでもいい思い出になりますように。異国の地で「Lost」な感覚を持っていませんように。

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